日本市場における静止画コンテンツの商業的未来は?
日本市場における静止画コンテンツの価値について
先日のブログで、役割を終えた画像ダウンロードサイトの活用について記載しましたが、改めて日本市場における静止画コンテンツの価値について考える機会がありました。
私が以前勤めていた会社では、2000年に社内ベンチャーの立ち上げを命じられました。事業計画は本来1年をかけて準備するはずでしたが、急遽3か月で立ち上げることとなり、慌ただしく準備を進めることになりました。当時のコンセプトは、
- 親会社で製造しているプリンタの消耗品を活用したビジネスを創出する
- 顧客の市場動向を直接把握する
この2点を軸に新規事業を模索しましたが、プリンタに関する知識を持っていたのは私のみという状況で、まさにゼロからのスタートでした。
絵葉書の自動販売機というアイデア
事業のアイデアとして浮かび上がったのが、「絵葉書の自動販売機」です。
当時、親会社はJ〇さんの券売機を製造しており、さらに私は日本最大級の自動車会社の現会長が推進していたマルチメディア端末のプロジェクトに参加していました。コンテンツを物理的な商品として販売する仕組みには興味がありました。
今日ではストリーミング配信が一般化し、デジタルコンテンツに対価を払う文化が根付いています。しかし、当時の日本では「無形のデジタルコンテンツにお金を支払う」という習慣が浸透しておらず、物理的な形で提供することで価値を認識してもらう必要がありました。
親会社のプリンタは、業界内でも世界最速の性能を誇っており、はがきサイズの印刷速度は従来の約50秒から25秒に短縮されていました。画像コンテンツのプリントに最適化すれば、データ転送を含めても約30秒程度で出力が可能となり、「待てる時間」内で提供できると考えました。
オンデマンド販売のメリット
当時の絵葉書市場では、印刷された商品を販売するため、在庫リスクを抱えていました。売れ行きが予測できるものしか市場に出すことができないため、新しいデザインやニッチな絵柄の展開が難しい状況でした。しかし、オンデマンド方式であれば、在庫を持たずに販売できるため、市場ニーズに関係なく低コストで新商品を提供できるメリットがありました。
さらに、販売のGUIでは、人気順やカテゴリ別の表示など、ユーザーが検索しやすい仕組みを導入することも想定していました。これは、少年ジャンプのアンケート人気ランキングのように、より注目されるコンテンツを前面に押し出す形式です。
また、全国の美術系教育機関と連携し、学生作品をコンテンツとして提供することで、売れた枚数に応じて報酬を支払う仕組みも検討しました。この取り組みにより、学生が本業の延長として収益を得られるだけでなく、自身の作品の市場評価を学ぶ機会にもなると考えていました。
実現に至らなかった理由
しかしながら、このプロジェクトは最終的に実現には至りませんでした。
理由は、会社の資本金が1,000万円であるのに対し、自販機の製造コストがどんなに安く見積もっても200万円かかること。さらに、給与や事務所の維持費を考慮すると、開発費を捻出することが困難であり、十分な台数を設置できないという資金的な課題がありました。
コンビニのマルチメディア端末に関しても、単位面積あたりの売上基準を満たすために多数の機能を盛り込む必要があり、単純な印刷サービスのみで収益を回収するのは難しいという課題がありました。結果的に、このアイデアは実現せず、お蔵入りとなったのです。
日本市場における画像コンテンツの価値
この経験を振り返ると、エンターテイメント業界では映像や音楽に対価を支払う文化が根付いていますが、画像(静止画)に対して消費者がお金を払う文化は未だ十分に形成されていないと感じます。商業・報道用途では一定の市場が存在しますが、一般ユーザーが画像を購入する習慣は依然として限定的です。
学校写真やスタジオ写真などもWebから発注でき、データもだダウンロードできますがメインは、プリントでありデータは副次的なもののような扱いという認識です。
こうした背景を考えると、静止画コンテンツが市場において価値を持つためには、単なる「画像データ」をメインとした対価を支払う価値を見出せる時代は来るのかと改めて考えさせられました。(私の認識が間違っているのかもしれませんが)
ダウンロードサービスを行っていた主な施設
ダウンロードサービスを行っていたイベントの例
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